スタンドアローンであったパソコンは,今ではすっかりコミュニケーションツールへと脱皮した。ディスプレイの中に,地平線の果ての友人がいる。ディスプレイの中に,出会うことのない親友がいる。何を隠そう,インターネットの一番の魅力は,それ,をおいて他にない,と断言しても間違いではないだろう。
イスラエルのハイパーニックス・テクノロジー社が開発した「グーイー(gooey)」という新しいチャットソフトが,ネット上で人気を集めている。グーイーは,ICQのように不特定多数のユーザーとではなく,同じウェブサイト上にいるユーザーとチャットできるのが特徴。同じ趣味の人間と知りあえる機会を得られたり,そのウェブサイトに関する話題をチャットすることもあるだろう。またECのサイトで,担当者がチャットで製品についての質問を受け付けるというような使い方も模索されている。既に全世界で3万人以上のユーザーがダウンロードし,ハイパーニックス・テクノロジー社では年内に100万ユーザーの獲得を目指している。
昨日のこの欄でも書いたのだが,今はパソコンを,電子メールをしたいからとか,チャットがしたいからとか,すなわちコミュニケーションツールとしてのみの理由で購入している人が多いのだそうだ。こんな話を聞いた。とある初心者のパソコンがトラブル起こしたときに,なんの躊躇いもなくすぐにマシンをフォーマットして再インストールをしたのだそうだ。データの復旧や設定の保持なんかをするよりも,今日来るメールに目を通すほうが重要ということらしい。それを見ていたパソコンを長年使ってきた人は,思わず感慨にふけってしまったそうな。コミュニケーションツールとしては,数日間動かないなんてことは許されないんだろうね。
僕はチャットもICQも手を出していないのでえらそうなことは何も云えないが,たしかにグーイーを使いこなせば楽しそうだ。たまたま行ったサイトにグーイーユーザーがいたら,声をかけてみるのも悪くはない。それは,リアルワールドの街中でいきなり声をかけるよりはとても自然なことのような気がする。同じ場に出会わせた,ディスプレイのそこにいる彼の人に向かって,声をかけられる。そんな素敵なことは,ないよな,やっぱり。
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